KAISEIブログ

 : 平成31年度入学式 校長式辞
 投稿日時: 2019/04/09

【平成31年度開星中学校・開星高等学校合同入学式校長式辞】

 「風ひかり」、本校の校歌は、こう始まります。「風光る」とは、春の日差しの中で、そよ風が吹き渡る状況を言います。桜吹雪が舞い、まさに風が光る春本番を迎えました。
 そうした今日のよき日、ご来賓の方々、並びに新入生の保護者の皆様のご臨席をいただき、「平成31年度 開星中学校・開星高等学校 合同入学式」を執り行うことができますことは、私ども本校職員にとりまして、誠に喜びとするところであります。謹んで御礼申し上げます。
 さて、新入生の皆さん、入学おめでとうございます。
 開星中学校へ入学する皆さんは、公立中学校にはない、入学試験という関門を見事に突破して、本校に入学されました。今年度の入学生は、18名と近年になく少ない人数ですが、今年度の入試は過去最高の不合格者が出ました。そうした選抜を経て入学する皆さんですから、高い目標と意欲を持って学校生活を送ってもらいたいと願っています。公立での中学校教育は、義務教育の最終段階として位置付けられています。しかし、開星中学校では、私学としての特色を活かし、将来大学進学を考えている人のために、島根県で唯一本校だけが行っている中高一貫教育を通じて、社会の発展に役立つ有望な人材へと成長していく基礎作りをしっかり行います。新入生の皆さんの大いなる飛躍を期待しています。
 公立中学校を卒業し、開星高等学校へ入学する皆さんは、義務教育を終えられ、進路として幾つかある選択肢の中から、本校を選び、受験、そして合格し、本日の入学式を迎えられました。島根県の高校入試は、年々中学校の卒業者数が減少しているに対して、募集定員は大きく減らないため、入学者が募集定員に至らない高校が公立・私立を問わず年々増えてきています。本年度は、本校も定員割れの状態で入学生を迎えることになりました。そういう状況ですので、例年以上に一人一人の入学生の皆さんによりしっかりとした環境を提供し、3年後、皆さんの進路選択が正しかったことが証明されるように指導してまいります。
 なお、高校入学生の中には、開星中学校23期生の諸君も含まれています。本学園で学ぶ先輩としての自覚の下、他の中学出身者や開星中学校の後輩をリード、またサポートしてもらいたいと思います。この式でも、最後に校歌を歌いますが、今この場で校歌を歌える新入生は、開星中学校出身の皆さんだけです。開星中学・高等学校の4年生としての自覚を持って、しっかり歌って、他の新入生の模範となってください。
 ところで、開星中学校・開星高等学校は、私立(しりつ)、ワタクシリツの学校です。私立学校が、公立学校と最も大きく異なるのは、その学校で行う教育の基盤に「建学の精神」がある点です。「建学の精神」とは、「その学校がどんな教育をめざして創立されたか」という理念、教育方針を示したものです。
 本学園は、今から95年前、1924年、大正13年に、大多和音吉・タカ夫妻によって創立されました。その「建学の精神」は、「品性の向上をはかり、社会の発展に役立つ有望な人材を育成する」ということでした。
 「品性の向上をはかる」とは、「よい心づかいで、よい行いができるようになる」ということです。「思いやりの心を持って行動できるようになる」と言ってもよいでしょう。皆さんは、思いやりの心の大切さについては、小学校でも、中学校でも、また、それぞれの家庭においても学んできたことと思います。しかし、自分では、「人のために」と思いやりの心を持ってした行いが、相手から喜ばれなかったり、よい結果につながらなかった経験はないでしょうか。私たちは、一人ひとり、立場や境遇も違えば、物の見方や考え方に大きな隔たりがあることもあります。また、その時々で心の状態も変化していくものです。そうした中で、よい心づかいで、よい行いをするためには、深い思いやりの心に基づく創造力、共生力、そして忍耐力が必要です。本校では、この3つの力を「つくる力」、「つながる力」、「もちこたえる力」と呼んで、大切にしています。これらの力を育み、品性の向上をめざしましょう。
 また、本校の「建学の精神」のもう一つの柱は、「社会の発展に役立つ」教育です。AI、人工知能に代表されるように、科学技術の発達が目覚ましい現代社会において、科学技術を宇宙自然界の中でよりよく活用できる冷静な判断力が求められています。これを本校では「先見先行教育」と呼んでいます。社会の先を見て先んじて行う教育です。
 今年は、あと1ヵ月足らずで「平成」の御代が終わり、「令和」という新しい御代となります。元号は、日本文化の象徴であると共に、時代の変化を理解するのにも役立ちます。大まかに言えば、「昭和」の時代は、前半が世界的規模の戦争に巻き込まれ、後半は、そこからの復興を果たし、経済的に発展した時代でありました。「平成」の時代に入ると、経済的にも政治的にも不安定な状態が続き、グローバル社会と言われながらも、内向き志向も強くなってきました。そして、「令和」の時代を迎えるにあたって、先行き不透明な社会であると言われています。ただし、このことは未来に希望がないわけではなく、一人一人が未来を切り拓いていく可能性が高い時代ということもできます。特に中学生、高校生の皆さんは、まさにその中心に位置しています。
 こういう時代ですから、学校もそういう人材を育てていくために、学校で行われている教育活動が、学校が担うべき本来の目的を担った取り組みになっているか再確認しなければいけません。学校は生徒の皆さんが、将来社会の中でよりよく生きていけるために教育を行うところです。学校で当たり前に行われていることが、この教育の目的を達成するためになっているか常に考えなければいけないと思います。社会の変革期には、より強く意識する必要があります。本校では、今年度から、高校普通科キャリアデザインコースにおいて、各クラス2人担任制を導入します。多くの学校で、クラス担任は、1人というのが一般的、言い換えれば「当たり前」とされてきました。しかし、海外においても、国内においても、クラス担任制を廃止し、学年全体でチームとして担任業務に当たったり、本校が導入するように、2人の教員がペアになり連携して1つのクラスの担任業務に当たる学校も出てきました。生徒のみなさん、一人一人の人間性をしっかり把握し、その可能性をより広めたり、高めたりできるような体制作りを推進します。これも先見・先行教育の一つです。
 以上、「建学の精神」の二つの柱について述べてきましたが、この「建学の精神」の具現化、具体的な形で取り組むために、毎年度、学校目標の年間テーマを掲げています。今年度のテーマは、「『時を守り、場を清め、礼を正す』を意識し、『場を清め』を完璧に」です。『時を守り、場を清め、礼を正す』という言葉は、聞いたことがある人もいると思います。真理を体得した人のことを「覚者」と言いますが、「日本の覚者」と呼ばれた森信三先生が提唱した人生の基礎・基本です。この3つの事柄は、いずれも大切ですが、今年度は、そのうち  「場を清め」を最優先に取り組みます。「場を清める」とは、「掃除にしっかり取り組む」ということでもあります。
「場を清める」、「掃除にしっかり取り組む」ということは、一見当たり前で、平凡なことですが、徹底して行うのは難しいことです。それだけに、根気をもって継続して取り組めば、非凡な力がもたらされます。「掃除の神様」と言われているイエローハットの創業者で、「日本を美しくする会」の相談役でもある鍵山秀三郎先生は、掃除をすると、次の5つがもたらされてとおしゃっています。一、心が磨かれる。二、謙虚な人になれる。三、気づく人になれる。四、感動の心が育まれる。五、感謝の心が芽生える。
 第一の「心が磨かれる」とは、心を取り出して磨くことはできませんので、目の前に見えるものを磨き、きれいにします。人の心は、いつも見ているものに似てきます。
 第二の「謙虚な人になれる」とは、どんなに才能があっても、傲慢な人は自分も人も幸せにすることはできません。掃除は人を傲慢ではなく、謙虚にします。
 第三の「気づく人になれる」とは、世の中で成果をあげる人とそうでない人の差は、無駄があるか、ないかです。無駄をなくすためには、気づく人になることが大切です。掃除を通じて、たくさんの気づきが得られます。
 第四の「感動の心が育まれる」とは、感動が人生を豊かにします。できれば人を感動させるような生き方をしたいものです。人が人に感動するのは、その人が手と足と体を使い、さらに身を低くして一所懸命取り組んでいる姿に感動します。
 そして、第五の「感謝の心が芽生える」とは、人は幸せだから感謝するのではなく、感謝するから幸せになれます。掃除は、その感謝の心を育んでくれます。
 新入生の皆さん、是非、掃除のように一見平凡と思われることを根気よく取り組んで、品性に代表される非凡な力を身に付けてください。
 新入生の皆さんが、開星中学校・開星高等学校の「建学の精神」を心に刻み、自分の持ち味を見つけ、その価値を高め、開星の校名の由来のごとく「社会の発展に役立つ有望な人材」に成長することを期待し、式辞を終わります。
               平成31年4月9日
                  開星中学・高等学校 校長 大多和聡宏