KAISEIブログ

 : 3学期終業式・壮行会・表彰~退任式
 投稿日時: 2023/03/18

昨日は3学期終業式とともに、全国大会に出場する柔道部とテニス部の壮行会、皆勤賞と精勤賞の表彰。最後に退任式を行い、飯塚先生とともに私自身も挨拶をいたしました。生徒諸君には話していませんでしたが、私も3月末をもって退職いたします。本校教職員をはじめ、お世話になった方々には、改めて心よりお礼申し上げます。

◆終業式

今年度最後の日になりました。入学以来、あなた方はコロナに悩まされ続けた、厳しい学校生活でしたね。それでも頑張って学校に通い、今日の日を元気に迎えられること、本当に嬉しく思っています。その意味でも、先ほど表彰を受けた皆勤賞・精勤賞は、例年以上に価値があるのではないでしょうか。そして部活動でも、柔道部とテニス部をはじめ、中国大会記録を達成した陸上部など、目覚ましい成果を上げたことは、本当に立派で頼もしく思います。来年度も一人ひとりが、自分自身の自己ベストを出せるよう、頑張ってください。

さて今年度最後と言いましたが、私自身がこうして話をするのも最後になりました。高校生には先日「進路講話」という形で、私の経験と考えを話しましたが、話の感想とともに、いくつか質問がありましたので、少し紹介します。たとえば「やりたいことをどうやって見つけてきたのか」「困難に向き合った時に、どうやって乗り越えたのか」「進路選択に迷った時に、どうすればいいのか?」「面接で緊張しないで堂々と話せる方法は?」など。中でも「今やりたいことがないので、見つける方法を教えてほしい」と書いてくれていた人は多かったです。実はこれらの質問、すべて私自身の答えは一つです。それは読書です。本を読むことを通して、私は道を進んできました。このことを別の方が、違う表現で話しているので、少し紹介します。

 

日本を代表する世界的な建築家で安藤忠雄という人がいます。大阪の工業高校卒業後、独学で建築を学び、建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞。また、フランスで最も権威ある国家勲章も受章されています。さらにアメリカのハーバード大学など、いくつかの大学で教鞭をとり、1997年には東大教授に就任。当時、工業高校卒業の学歴でありながら、東大教授になったことが話題になりました。

その安藤さんが2020年に「こども本の森 中之島」という図書館を建築して、大阪市に寄贈しました。その後、さらに岩手県、兵庫県に「子どもの森図書館」の2号館、3号館を設立しているのは、安藤さん自身の、子どもに本に親しんでほしいという願いからです。安藤さんは若い時代には2つの旅が必要だという意味の話をしています。一つはリアルな旅で、もう一つはヴァーチャルな旅。ヴァーチャルは読書です。

安藤さんは20代のころ、ひたすら自分の価値観を築くために旅を続けたと言います。「旅のなかで考え、成長をしてきたといっても過言ではありません」と。続いて「必ずしも物理的に遠く離れた地点へ移動すること自体が大切なのではなく、旅に出て独りで歩くことが何より重要なのです。独りであれば旅を通じて『別な世界』を知る過程で、さまざまなことに思いを巡らせ、自分で考えざるを得ない。そして結局自分の足元を振り返る、つまり自分との対話を促されるからです」と、考えを語りました。

とくに建築という分野は「社会・経済・歴史・技術など、あらゆるものが重なりあいながらできあがっていく」というのは、想像がつきますね。「そうした学問は学校ですべて教えてもらえるけれど、それだけで精一杯だと、自分で考える時間がない」との懸念を、安藤さんは示しました。とくに「多量の情報が氾濫する現在の社会において、人は知らないうちに『考える自由』を奪われている」という指摘は納得できます。安藤さんは、教えてもらう時間よりも、考える時間の方が大事だと強調しました。

とはいってもお金や時間など、物理的な制約は誰にもあるし、とくに子どもが一人旅というのは現実的ではありません。それゆえ安藤さんは、読書を通して心の中で旅をしてほしいというわけです。「情報など、ネットで入るだろう」と思うかもしれませんが、読書は情報を得るのが目的ではなく、自分で考える時間を作ることが目的なのです。改めて読書の意味を、今いちどあなた方にも考えてほしくて安藤さんの話をしました。

最初に私が「答えはすべて読書です」と書いたのは、私は新しい仕事に向き合う時には、必ずその分野の専門家と言われる人の本を読み、またその分野世界を扱う小説を読んできました。「評論と小説は、どちらを読んだ方がいいですか?」という質問もありましたが、どちらでも全くかまいません。私は生徒の進路相談を受けるたびに、たとえば教育関係や国際関係の論文をはじめ、歴史小説、経済小説、医師が書いた医療小説など、手当たり次第に本を読んできました。