KAISEIブログ

 : 開星中学校・高等学校合同入学式 「校長式辞」
 投稿日時: 2013/04/18

【お礼】
本日のブログの中に紹介されている司馬遼太郎氏の「21世紀に生きる君たちへ」の文章をこの場へ掲載することを、著作権者である「司馬遼太郎記念館」様に許可していただきました。この場を借りてお礼申し上げます。
この「21世紀に生きる君たちへ」の文章に恥じない教育を行なって参ります。

4月9日(火)
平成25年度の開星中学校・高等学校の合同入学式が挙行されました。

「校長式辞」の中で、校長先生より司馬遼太郎氏の「21世紀を生きる君たちへ」の文章が紹介され、新入生へ贈られました。

本校は、本年度より文部科学省よりSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定され、日本の将来をになう科学技術系の人材育成にも力を注いで参ります。「校長式辞」は、そのSSH指定校としての決意表明ともなりました。

以下に「校長式辞」の全文を掲載いたします。


「風ひかり」、本校の校歌は、こう始まります。「風光る」とは、春の日差しの中で、そよ風が吹き渡る状況を言います。まさに風が光る季節を迎えました。

そうした今日のよき日、ご来賓の方々、並びに新入生の保護者の皆様のご臨席をいただき、「平成25年度 開星中学校・開星高等学校 合同入学式」を執り行うことができますことは、私ども本校職員にとりまして、誠に喜びとするところであります。謹んで御礼申し上げます。

さて、中学・高校、合わせて214名の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。

開星中学校へ入学する皆さんは、公立中学にはない、入学試験という関門を突破して、本校に入学されました。公立での中学校教育は、義務教育の最終段階として位置付けられています。しかし、開星中学校では、私学としての特色を活かして、高校そして大学で学ぶことを見通し、校名である「開星」の由来のように、社会の発展に役立つ有望な人材へと成長していく基礎作りをしっかり行ってまいります。

開星高等学校へ入学する皆さんは、義務教育を終えられ、進路として、いくつかある選択肢の中から、本校を選び、受験、そして合格し、本日の入学式を迎えられました。3年後、皆さんの選択が正しかったことが証明されるように指導してまいります。

なお、高校の入学生の中には、開星中学校17期生の諸君も含まれています。本学園で学ぶ先輩としての自覚の下、他の中学の出身者や開星中学の後輩をリードしたり、サポートしてもらいたいと思います。この式でも、最後に校歌を歌いますが、今この場で校歌を歌える新入生は、開星中学出身の皆さんだけです。しっかり歌って、他の新入生の模範となってもらいたいと思います。

さて、開星中学校へ入学する皆さん、ちょうど1ヵ月前、3月9日は何の日だったか憶えているでしょうか。入学前説明会の日でした。入学までの生活や本校の教育方針などについて説明しましたが、入学までの課題も配らせてもらいました。「たくさん課題があるなあ」と思った人もいるかもしれません。

その課題の一つに、司馬遼太郎さんが書かれた『21世紀に生きる君たちへ』の黙読と音読、そしてその感想文も含まれていました。皆さんが提出する感想文を読ませてもらうのを私は楽しみにしております。

また、開星中学から開星高校に進学する皆さんも、同じものを3年前に読み、そして感想文を書いてもらいました。先日の卒業式の後の謝恩会で、その感想文を返却しましたので、思い出している人も多いと思います。

一方、開星中学以外の中学から開星高校に入学される皆さんは、司馬遼太郎さんの『21世紀に生きる君たちへ』を知らないかもしれませんので、簡単に紹介します。

歴史小説をたくさん書かれた作家・司馬遼太郎さんが、1989年、小学校6年生の国語の教科書のために書かれたのが、『21世紀に生きる君たちへ』という文章です。

司馬遼太郎さんは、1996年、72歳でお亡くなりになりました。その葬儀の際、奥様が「これが、夫の皆様へのメッセージです」と語られ、この文章を参列者の方々に配られました。司馬遼太郎さんは、歴史小説だけではなく、日本はどんな国か、日本人はどうあるべきかなど、世界的な視野で論述された作家です。『21世紀に生きる君たちへ』には、奥様がおっしゃられたように、司馬遼太郎さんの思いが込められています。

2001年、まさに21世紀幕開けの年に、「司馬遼太郎記念館」が、東大阪市にあるご自宅を活用して開館しました。この記念館は、『21世紀に生きる君たちへ』の文章が基調になっており、地下1階の壁面に、この文章が大きな額にして掲げられています。

また、記念館近くの公園には、この文章の一部を抜粋した文学碑が設置されています。その文学碑に刻まれている文章を、新入生の皆さんへのお祝いのメッセージとして贈らせてもらいます。

[b]君たちは、いつの時代でもそうであったように、自己を確立せねばならない。
自分に厳しく、相手にはやさしく。
という自己を。
そして、すなおでかしこい自己を。
21世紀においては、特にそのことが重要である。
21世紀にあっては、科学と技術がもっと発達するだろう。
科学・技術が、こう水のように人間をのみこんでしまってはならない。
川の水を正しく流すように、君たちのしっかりした自己が、科学と技術を支配し、よい方向へ持っていってほしいのである。
[/b]

私は、この文学碑を見た時、まさに本校の建学の精神、本校が大切にしている教育理念を象徴的に表してある文章だと思いました。

本校の建学の精神は、「品性の向上をはかり、社会の発展に役立つ有望な人材を育成する」ことであります。品性を向上させるには、「自分に厳しく、相手にはやさしく」といった道徳性を確立しなければいけません。また、社会の発展に役立つためには、科学技術が益々発達している現代社会において、科学技術を宇宙自然界の中でよりよく使いこなせる冷静な判断力が求められています。

開星中学・高等学校は、今年度より文部科学省から「スーパーサイエンスハイスクール」、略して「SSH」と言いますが、その学校に指定されました。先ほど申し上げた本校の建学の精神を具現化し、それを広くわが国の学校教育の発展に役立ててもらうために、文部科学省に申請し、審査の結果、全国で新規に指定された27校の中の1校として採択を受ける栄誉をいただきました。

このSSH事業は、本校を挙げて取り組んでいきますが、今年度入学された皆さんが、その中心となります。21世紀をよりよい時代に担っていく人材として、新入生の皆さんが成長してくれることを期待しています。

式辞の最後に、『21世紀に生きる君たちへ』の結びの一節を紹介して、終りとします。

[b]君たち。
君たちはつねに晴れあがった空のように、たかだかとした心を持たねばならない。
同時に、ずっしりとたくましい足どりで、大地をふみしめつつ歩かねばならない。
私は、君たちの中の最も美しいものを見つづけながら、以上のことを書いた。
書き終わって、君たちの未来が、真夏の太陽のようにかがやいているように感じた。
[/b]

平成25年4月9日
開星中学・高等学校 校長 大多和聡宏

太字部分【出典:21世紀に生きる君たちへ(司馬遼太郎記念館発行)】