KAISEIブログ

 : 校長式辞 開星高等学校卒業式
 投稿日時: 2014/03/06

3月1日(土)、開星高等学校の卒業式が挙行されました。

「校長式辞」の中で、校長先生から卒業生に〈勇気(ゆうき)〜善いことを率先して〜〉という言葉が贈られました。

その「校長式辞」をご紹介いたします。



今日から弥生3月です。天地自然の営みが、風光る春の訪れを少しずつもたらしてくれています。

そうした今日のよき日、ご来賓の皆様、そして、卒業生の保護者の皆様のご臨席をいただき、「平成25年度 開星高等学校 卒業証書授与式」が挙行できますことは、私ども本校職員にとりまして、誠に喜びとするところであります。本校を代表いたしまして、深く感謝申し上げます。

さて、3年生の皆さん、卒業おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。

皆さんが高校を卒業する今年、2014年は、19年に1度の年であることを知っていたでしょうか。今年の元日は新月、月が見えなくなる日でした。今年2回目の新月は1月31日。そして、今日、3月1日が3回目となり、次は3月31日です。国立天文台によると、「ひと月に2度の新月が2回ある年」というのは珍しく、19年に1度しか巡ってこないそうです。前回が1995年、卒業生の皆さんが生まれた頃です。そして、次が2033年、卒業文集「20年後のわたし」に皆さんが自分の未来を予想して書いた頃となります。

新月に関する話題を紹介しましたが、「新月の日に願い事をすると叶う」という言い伝えがあります。これは事実かどうかわかりませんが、「開星ドリカム・プラン」に取り組んできた皆さんの夢や目標が実現することを、私はこれからも祈り続けてまいります。

本校を卒業される皆さんですが、これからも夢や目標を大切にして人生を歩んでいかれることを期待し、その参考として、私はある勇気ある行動について紹介します。

1ヵ月あまり前になりますが、私は1泊2日で沖縄に行ってきました。目的は、「平和活動家」と称している人たちが汚した米軍基地の周辺を掃除するという活動を続けている「フェンス・クリーン・プロジェクト」に参加するためでした。初日は辺野古で、2日目は普天間で掃除をしました。

沖縄では、「平和活動家」を名乗る人たちが、覆面・マスクやサングラス姿で、連日米軍基地のフェンスに色とりどりのガムテープや紐などを括りつけ、ガムテープの芯などゴミは、フェンスの内側に投げ捨てています。また、出入りする米軍関係者に「海兵隊は出て行け」とか「基地はいらない」といった罵声を浴びせるといった行為を繰り返しています。

彼らが我がもの顔でガムテープや紐を巻きつけている場所は、自分の土地ではありません。他人の土地です。汚い言葉で罵倒する相手は、米軍兵士だけではありません。その家族や幼い子供であっても、基地に出入りする人間であれば、日本人も含め見境ありません。

ここまでくると、犯罪ではないかと思えますが、「反戦」、「反基地」、「反米」を掲げる彼らの行動に、警察は手を出せないでいます。また、多くのマスメディアも見て見ぬふりで、ほとんど報道されません。また、東日本大震災の救援活動に、普天間基地に所属するアメリカ海兵隊の多大な貢献があったことを評価することが、沖縄ではタブーになっているそうです。

そのような状況の中、一昨年の9月、「こんな平和運動はおかしい」と感じた人たちが立ち上がり、米軍フェンスに張られたガムテープや紐などをはぎ始めたことから、「フェンス・クリーン・プロジェクト」はスタートしました。リーダーの手登根安則さんは長年のPTA活動を経て、沖縄の教育問題、特に平和教育を検証する活動を始められた方で「反戦を叫んで街を汚す行為を放置しておけない」という強い思いで取り組まれ、その活動の輪は若者を中心に広がっています。

また、罵声を浴びせる活動のすぐ横で、米軍への友好や感謝を表す横断幕を掲げ、笑顔で挨拶をする「ハート・クリーン・プロジェクト」も週1回のペースで継続されています。こうした活動を続けるうちに、米軍の中から、フェンス周辺の掃除に参加したり、挨拶活動に対して、わざわざ車から降りて握手を求める兵士も現れ始めたそうです。

こうした状況について、私は、昨年本土から現地に行かれた方のお話や一部の新聞報道で知っていましたが、実際に参加してみて、およそ平和とは正反対の活動をしている人の姿を直接目にして、沖縄の平和運動に対してかねてから抱いていた疑問が、確信に近いものに変わりました。

戦争のない世界を願う思いは、私も同じです。卒業生の皆さんをはじめ、ここにいる皆様もそうでしょう。本当に無くてすむなら、基地も軍隊もない方がよいと思います。しかし、現実の国際情勢を見れば、軍備なくして日本を守れないことは、良識のある人であれば誰でも理解できることだと思います。一方、沖縄では、いわゆる「反戦」がビジネスとなり、米軍に反対しているものの、本当に無くなってしまったら困る人もかなりいるそうです。

今回、私が沖縄に行ったきっかけは、認定NPO法人「日本を美しくする会」の有志の方からのお誘いでした。この会は、20年前に発足以来、全国各地の学校を訪問し、トイレ掃除を中心に学校をきれいにする活動に取り組まれています。そこから得られた経験則として、トイレの汚い学校は、生徒の心も荒んでいるそうです。同様に、街の公園のトイレが汚れている地域は、風紀も悪いそうです。このような経験から、「平和活動家」と称する人たちが汚したフェンスをそのままにしておけば、やがては街全体が汚れ、住む人々の心も荒むという危機感があり、この勇気ある活動を支援されています。

沖縄の平和運動を先導している人は、米軍基地周辺を汚すことを正義と考えているそうです。なぜなら、「基地は、粗大ごみ以外何物でもない」とみなしているからです。ところで、この「フェンス・クリーン・プロジェクト」を支援されて中心人物が、先ほど紹介した「日本を美しくする会」の相談役である鍵山秀三郎氏です。「イエローハット」の創業者と言った方がわかりやすいかもしれません。この鍵山秀三郎氏は、「いかなる理由があろうと、街を汚す行為に正義はない」とおしゃっています。

沖縄の複雑な状況下で、街を汚す反戦活動に対して問題提起をすることは、本当に勇気がいることだと思います。また、それを支援することも勇気がいるでしょう。今回私と一緒に参加した人の中には、ご家族から「無事で帰ってきてね」と言って送り出された方もいらっしゃいました。

今年卒業する皆さんは、東日本大震災の直後に高校に入学されました。東日本大震災の後、日本人が忘れかけていた伝統的な価値観を大切にしようとする動きが出てきた中で、皆さんは高校生活を送られました。

日本人が忘れかけていた大切な価値観の一つに、善いことを率先して行う勇気があると思います。東北各地での勇気ある行動を見聞きして、感動した経験が皆さんにもあると思います。沖縄では、基地問題に関して、勇気をもって「善いこと」あるいは「正しいこと」に取り組むには、いろいろな障害があるようです。そうした中でも、勇気をもって行動する人が出てきました。

最高道徳の格言に「率先善を認め勇を鼓してこれを貫く」というものがあります。率先して善いことをすることに価値を認め、勇気をしっかり持って、善いことを行うことが大切であるという教えです。

卒業生の皆さん、これからの人生、「善いことをしよう」、「正しいことをしよう」という使命感を抱いて歩んでください。「使命」とは、「命を使う」と書きますが、使命を果たすには、勇気が必要です。卒業生の皆さんが、自ら勇気を持って人生を切り開き、「開星」の校名の由来の如く、社会の発展に役立つ有望な人材に成長されることを祈念して、私の式辞を終ります。