KAISEIブログ

 : 17文字に込める 〜 遠足の思い出【水野校長ブログ】
 投稿日時: 2021/05/08


昨日、岡先生から高校2年生が取り組んだ、俳句作品を受けとりました。みんなが出かけたのは、大社と日御碕など出雲方面。島根県を代表する観光地です。すでに行ったことがある生徒も多いと思いますが、クラスメートとの時間はまた、別の感激を伴うことでしょう。17文字に凝縮された思い出は、それぞれに味わい深いものがありました。最優秀賞と優秀賞は、朝日新聞とNHKの俳壇と歌壇で多数の入賞実績がある、私の知人の加藤忠男先生にお送りしたところ、次のようなお言葉をいただきました。「春の一日の楽しい遠足、おだやかな景色や友だちとの交流によって、日頃の窮屈な思いが癒やされ、発散されていく様子が読み取れました。私もまた「開放感」を味わわせていただきました。ありがとうございました」ということで、それぞれの作品のご講評もいただいていますので、併せてご紹介いたします。

※出雲大社の写真はたまたま一昨日、出雲市の中学校訪問で通りかかった時、撮影しました。日御碕は2週間ほど前、私自身が初めて出かけた時に撮ったもの。その日、斐川平野の菜の花畑にも立ち寄りました。


❀高校二年遠足 俳句コンテスト入選作品紹介❀

【令和3年4月21日 応募数65句】

🖌最優秀賞

石段でつまづく我に山笑う     出川育夢

○久しぶりの遠足で気持ちも弾んでいたのでしょう。周りの風景もすっかり春の装いです。新緑の景色に目をやり、友だちとの会話もあり、足下もおろそかになったのでしょうね。石段につまずいてしまいました。でもそれさえも楽しいのです。季語「山笑う」がおおらかに作者の気持ちを受けとめています。楽しくも、ほほえましい佳句です。

「はいちーず」君との思い出春の色 内田一花

○親しい「君」との写真撮影。楽しい思い出として残るに違いありません。写真の背景には春の風物も映ったことでしょう。それよりも春の柔らかなパステルカラーは「君との思い出」の色として一葉の写真に写し取られました。「はいちーず」のひらがな表記が柔らかさを醸しています。

マスクとり初めて知った君の顔   内田一花

○コロナ禍の中で生まれた俳句ですね。前句の写真撮影でしょうか。「初めて知った君の顔」ですが、思っていたとおり、いや予想していた以上の好印象だったのでしょうね。前句の「春の色」の明るさがこの句にも及んでいるのです。

🖌優秀賞

日御碕キラキラ輝く友と海     安田小桜

○真っ白な灯台と紺碧の海。「キラキラ輝く海」だけだったら普通の句になってしまったでしょうね。「友」もまた輝いていると見る作者の感性が素敵です。「キラキラ輝く友と海」を身近に感じている作者も間違いなく輝いているのです。

日御碕高台のぼって春の風     内藤 潤

○季語「春の風」とは、春風駘蕩と言われるように、おだやかであたたかな春の風をいいます。春風に吹かれる心地よさは「高台のぼって」に由来しています。目を細めて春風を全身に受けている様子が想像されます。

春の日に出雲大社で願い事     加納真央

○「春の日」には春の太陽やのどかな陽光をさす場合と、春の一日をいう場合があります。春の遠足の一日と解釈してもいいのですが、私はおだやかな春の日差しの中での祈りの姿と読みました。あたたかな春の日差しの中に頭を垂れる作者が見えてきます。


🖌優良賞

春風吹き高い灯台見下ろす海

春の日に神門通り食べまくる    角 陽太

日御碕灯台よりも春の海      住田七海

快晴や歴史感じる出雲の地     田中美陽

友と行き青空広がる日御碕     田辺己

日御碕赤い夕陽と青い海      出雲裕貴

日御碕夕暮れ時に来たかった    出雲裕貴

日御碕顔もお空も快晴だ      内藤璃奈

春の波海風そよぐ日御碕

春びより出雲を学ぶ歴博で     永澤瑠奈

岸の上春風つよし波の音      青木弥悠

ウミネコが空に飛び交う日御碕   安部陸斗

風光り出雲の旅に出でにけり    池田安寿

青い空きれいに見える白い塔    中村美羽