KAISEIブログ
昨日、始業式を行い2022年度の新学期が始まりました。久しぶりに生徒の声が校内に響き渡り、待ちに待った活気ある日常のスタートです。
●始業式講話
おはようございます。今日から新学期ですが、あなたは充実した春休みを過ごせたでしょうか。コロナも治療薬の開発・認可が徐々に進み、海外や国内の地域によっては、少しずつ日常が戻りつつあります。とはいえ感染者数はなかなか落ち着かず、あなた方にも引き続き警戒をお願いしますが、今年度も皆が元気で、はつらつとした学校生活が送られるよう、先生方とともに応援していきます。
さて今年も、昨年の中学に続き、高校の学習指導要領が改訂するので、今日はこのことについて話します。およそ10年ごとに、時代の変化に合わせて指導要領は改訂されてきました。今回は「総合的な探究の時間」をはじめ、歴史や地理、理数だけでなく古典など7つの探究科目が新しく生まれます。本校が大切にしてきた「探究」がキーワードであり、ますます重要な活動になるでしょう。大学入試も同じ方向ですから、よく意識しておいてください。
さて探究という意味を、深く考えたことはありますか? 大辞林という辞典には「物事の価値や在り方などを深く考えて、筋道をたどって明らかにすること」とあります。活用例として、広辞苑には『真理の探究』『真実の歴史を探究する』」などと書かれていました。あなた自身、腑に落ちる体験をしたことはあるでしょうか。言うまでもなく「探究型学習」とは、単に暗記するだけの勉強法ではありません。「自ら問いを立てて、情報収集をしながら解決へ導く学習」と指導要領に書かれていますが、「なぜ」「なぜ」と、自分に問いかけること。勉強だけでなく生活の中でも、探究する姿勢を大事にできるとよいでしょう。
そして今年度、指導要領の改訂を本校の生活信条にも反映します。これまで火曜日は「正しい判断のもとに行動し、責任をもつ人となります」という文章を読んできました。今年度からは「よりよい判断を求め、真理を常に探究します」と変更します 。すでに教室に新しい表を掲示しているので、確認してください。正しい判断と言うと、たった一つの正解がある印象ですが、実際に社会でそうした場面というのは多くありません。というのも自分にとっては正しくても、他人の立場から見るとそうでもない。あるいは、今は良さそうに見えても、時間が経てば別の判断の方が望ましい、ということがあります。思い当たることはありませんか?
例えば今、起きているウクライナ問題は、プーチンの判断ミスに始まり、アメリカ、EUをはじめとした各国が、次々と判断ミスを重ねてきており、結果として泥沼化したと言われています。では、何が正しい判断だったのか? そもそも、世界全体にとっての正しい判断などあったのだろうか? 首をかしげたくなります。そう思うと、判断の正しさを問い直すのではなく、事態を改善させるための、より良い判断を追及することが大事なのだろう、そのように思うのです。
このことは、私たちの実生活の中でも当てはまります。私たちは絶え間ない時間の流れと、社会の変化の中で生活しているわけですから、皆でより良い判断を求める姿勢を、大切にしていきましょう。併せて「真理を深く探究する」という真理の意味も、ぜひ調べてみてください。自分自身が納得でき、周りの人にも支持される真理の探求。あなた方生徒だけでなく、私たち教師も共に心がけてまいります。
さて明後日は入学式です。中学校31人、高校170人と計200人を超える新入生を迎えますので、先輩として温かく支えてあげてください。新入生に対して、私からは「知識を得ることを大切に」という話をします。まさに学校の原点ですが、これもウクライナ侵略のニュースを耳にするたび、最近とくに強く感じてきました。ウクライナ国民の犠牲には、悲しみと怒りを感じる日々ですが、時には驚くべき話も伝わってきます。一つは、ロシア国民の多くが、この侵略を支持しているという調査結果です。信じがたいほど残虐な行為もあるのに、8割近くの国民が支持をしているという。なぜなのでしょう、あなたは不思議に思いませんか? ロシア国民は、特別に残酷な人なのでしょうか? 必ずしもそうではないと思います。報道などから想像すると、自由な言論の封鎖で、国民が正しい事実を知らないことが最大の理由でしょう。
この事実に触れた時に、改めて「知らない」ことは恐ろしいし、罪が深いと思いました。つまり自分が「知らない」ということは、偏った考えや間違った行動を許してしまい、意図せずして他人を苦しめたり、他人を傷つけてしまいかねないということです。実際、私自身も「知らなかった、ごめんなさい」といった体験をしたことは、少なからずありました。ただ今回、ロシア国民が知らないのは「知らせない」という権力者の意志、隠ぺい行為によってつくられた「知らされていない」という受け身の状況です。ですから、仕方がない面もあるのかもしれません。
しかし少し視点を変えてみましょう。知らないのは、知らされていないという受け身の結果だけでなく「知りたくない」。あるいは「知ろうとしないから知らない」、という消極的な態度によっても生じます。言い方を変えると、意識が欠けていたり、勉強不足によっても起きることなのです。これは自分の側に原因があるわけですね。
そう思うと、先ほど述べた真理を探究する態度が、いかに大切であることがわかります。公正で平和な社会。言い換えれば民主的な社会を作っていく上で、なくてはならない条件は、一人ひとりが真理を探究していくことに他なりません。ここに、私たちが幅広く勉強する意義があるのだと思います。
ウクライナ侵略は、永遠に歴史に記録される事態ですから、より関心を持っていきましょう。最近、私は島根県の公職の方と話す機会があり、もし松江市がウクライナから避難してくる人を受け入れることになったら、開星中学・高校を、子どもたちの学びの場として考えてくださいと言いました。このことは、国会議員にも伝わり、賛意を得られています。本校の先生方にも、その機会が来たら協力してくださいとお願いし、頼もしい返事をもらいました。それもククくん、ディノんくんと、お互いの信頼を築く交流をしたあなたたち開星生であれば、きっと力になれるだろうという確信があったから、申し出られたのです。ウクライナ・サポートチームを作ろうと言ったら、答えてくれる生徒は少なくないだろうと想像しています。今、ウクライナの子どもたちにとっては安心して過ごせる空間が、何より大切なのではないでしょうか。たくさんの課題があるので、簡単に実現するとは思いませんが、仮に今回ではなくても、将来的にそうした機会を迎えた時のためにも、今後の成り行きには関心を持ち続けてください。
最後に、今年の卒業生も進学に、就職に目覚ましい実績を残しました。模擬試験などの結果からすると「ミラクルだ」といった声も聴かれましたが、それほど最後の最後まで、先輩たちが努力を重ねた結果だと思います。そしてその努力を支えた先生方がいたということも、再確認しておいてください。卒業生座談会でも、いかに先生方に支えられたかと先輩たちが話していました。今年は先ほど紹介した、若さ溢れる新任の先生もたくさん加わって、ますます指導体制が充実しています。ぜひ、あなたの成長のために、先生方を上手に利用してください。
では新学期、勉強に課外活動に、気持ち新たにいっそう充実した学校生活を送ってほしいと願います。
※文中の支持率は、政権に批判的な調査機関でも80%近い数字が出ていると言われています。しかしながら、回答を拒否した人が含まれていないという報道もありました。またそれ以前に、かなりの富裕層が国を離れ大規模な「頭脳流出」が起きていると言われています(一説では侵略後2週間あまりで20万人もの人が海外に脱出しているという推計も ~ NHK国際報道2022)